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さよならと
言わずと決めた
別れ駅
また会えるかと
考え泣いて
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ピヨピヨピヨピヨ
飛べない鳥さんやってきた 怪我した羽をバタつかせ
もう大丈夫 優しく頭を撫でてあげた
私のために 綺麗な鳴き声を聞かせてください
私の心を癒すために
貴方と私 助け助けられて
さよなら涙さん 笑顔さんの方が魅力的だから
別れたはずなのに涙さんは ひょっこり会いにやってくる
悲しいときにやってくる 笑顔さんと一緒にいるときにもやってくる
どんなに怒ってもやって来る 献身的な貴方
そして優しく 頬を撫でてくれる優しい貴方
それでもさよなら涙さん 笑顔さんの方が魅力的だから
花は自分で水をやれない
そして誰かに助けを呼ぶこともできない
貴方が気付いて上げないと 枯れちゃうんだ
だから気付いてあげて 聞こえない悲鳴を
気付いてあげて 綺麗な花びらを咲かせている花も
土の下では 頑張ってるんだということも
熱帯夜の都会の喧騒とは対照的に、ビルの地下にある静かで涼しいカクテルバー。
店内は薄暗く、アレキサンダーに溺れる女性と私以外の客は存在しない。
狭い店内の一角にあるグランドピアノで、無名ピアニストが丁度良い音量で悲しげな曲を奏でている。
カウンター席で壮年のバーテンダーと、会話をしている女性の声が聞える。
耳に入ってくる会話から、在り来りな失恋話だと分かった。
私は少し離れたテーブルで、辛目のブラッディ・メアリーとゴールデン・バットの濃い煙に酔っていた。
「ねぇマスター。なんで人は恋をして、――別れるの」
女性の言葉に耳を傾けると、よく聞えなかったが大体このようなことを言っていた。
彼女の在り来りな問いに、バーテンダーは「さて。ねぇ・・・」と、優しい口調でかわした。
「今夜は独り言を言わせて」
彼女はそう言うと、長いため息してカクテルグラスを木製のカウンターに置いた。「コン」と素朴な木の音が静かな店内に小さく響いた。
ピアノの澄んだ音だけの静かな店内。
私は二本目の煙草に火を点け、煙とピアノを肴に、ブラッティ・メアリーの味に酔いしれる。
「あの人は、――今、どこにいるんだろう」
ピアノの音色に合わせ、小さく口ずさむ。
既存の詩なのか即興の詩なのかは分からないが、哀愁と優しさが感じられる詩。
「別れる恋とは、分かっていたわ。でもね、悲しい」
彼女はアレキサンダーが少し入ったカクテルグラスを、ゆっくりと回す。
淡い桃色がグラスに波状の模様を描いた。
「もう少しだけ、一緒に居られると、思っていたのに」
――小さな詩は終わったらしく、悲しげな唇が微笑をつくり、グラスの桃色をゆっくりと飲み干した。
私は彼女の詩に聞き惚れて、心の中で小さく拍手をして、ブラッティ・メアリーを口に含む。辛目の味が、彼女の詩に似ていると思った。
「貴女の歌声は、――私の店に合っていますね」
バーテンダーが笑い皺を作り、呟くように言った。
「ありがとうマスター。アタシの味方は、――マスターだけだよ」
彼女は赤い顔で悲しそうに笑った。
どうやら彼女はスコーピオンを注文したらしい。
グラスに爽やかな色合いが注がれると、氷の解ける音が響く。
「見返してやると後姿に言った優しい恋の終わりが、一夜経つだけで」
また、あの優しげな歌声が聞えてきた。
悲しげな微笑が見える唇が、詠う。
「優しくないと思えてしまうのよ」
店内に時計が無いため、右手の腕時計で時間を確認した。
――どうやら、夜が明ける時間のようだ。
紫煙をくゆらし、今日を考える。
――もう少し、彼女の詩を聞いて酔っていようか。
彼女が氷だけになったグラスを回す。
「カリン」と、澄んだ音を大き目の氷が鳴らした。
黒い雲が低く、太陽の光を全て遮断している。
今にも雨が降りそうだ。
雨宿りのために寂れた喫茶店に飛び込んだ。「カランコロン」と心地の良い音が聞える。
――テーブルにお冷とお絞りを置いてくれた人物は、目尻の皺が深く優しい印象を与えていた。
店内にこの人物と私しかいないことから考えると、この人物はこの店のマスターのようだ。
店内を見渡すと客は私以外いない。
年季の入ったテーブルは、雑巾で拭いた後が見える黒色。お冷の水滴がテーブルに円い模様を描いた。
ぼんやりとあたりを眺めていると「こちらがメニューです」と、低音の気持ちの良い声と震えた手で渡してくれた。
メニューは全て手書きで書かれていた。優しそうな文字だった。
一呼吸間を置いてから、ホットコーヒーとホットケーキを注文した。
マスターは私に一礼してカウンターに戻っていった。
私は窓を見た。案の定雨が窓を強く叩いていた。
雨の音とマスターがホットケーキを作っている音と匂い、それと暗い店内を灯すオレンジ色の裸電球が、良い感じの空間を私に提供してくれた。
――また店内を見渡す。飾りの全く無い質素な店内だが、気品さが感じ取れる店内。
時計が無いことに気付いた。
「どうして時計が無いんですか」
マスターは会心の笑みをもらし、ホットケーキとホットコーヒーを私の前のテーブルに置いた。目の前が湯気で白く染まった。
「ここは、――時間なんてものは無いんですよ」
ゆっくりとした口調。マスターが言うとあたかも事実のように聞える。
ホットケーキを食べ終えて、ぬるくなったコーヒーを口に含んでいると、マスターが向かいのテーブルを手馴れた手付きで拭きながら、話しかけてきた。
「――どうでしょうか」
「静かで良い店ですね」
何が「どうでしょうか」なのかが分からなかったが、自然と言葉が口からこぼれた。
それを聞いたマスターは背中で笑った。
「この店を長年やってますが、何度言われても良いですね」
今まで拭いていたテーブルのイスに座り、雑巾を畳みながらまじまじと私を見つめる。
「いつからここを始めたんですか」
「もう、――20年ほどになりますね」
何かを思い出すかのように上を向いて答えた。
雨がより強くなってきた。
「雨は商売には敵ですが、良いものですね」
マスターは雨粒が叩いている窓を見ると、呟くように言った。
傘を差さずに全速力で走る学生が横切った。
「静かなもんですね。外では必死に走っている学生がいるというのに」
不慣れな独り言が自然と口からこぼれた。
「そうですね。ここは――」
マスターはそこで言葉を紡ぐのを止めると、立ち上がりカウンターの方に戻った。
私は最後の一口を飲み干し、コップを皿に戻した。「カン」と甲高い音が、2人しかいない店内に響いた。
「雨は当分止みそうに無いな」と、心の中で呟いた。
冬の夜を大きな音を立てて、特急電車が走る。
湯気だった車内。車内のほとんどの人はとても疲れた顔をしている。
少し見渡す。その中でも一際暗い高校生程度の少年が目に入った。
肘掛に絶えず腕を変えながら頬杖をつき、時折独り言を吐きながら携帯電話をいじっていた。
ここからでは携帯電話の液晶画面に映る内容が分からないが、独り言から彼女に振られたのだろうと推測した。
金色に染めた髪の間から見えるピアス。それをいじるのが癖なのか頬杖をつく腕を変えるたびにいじっていた。
車内はとても静かで、唯一の音は電車の独特な音と少年の携帯のバイブレーターの音だけだった。
目印にしているパチンコ店の派手なネオンが、少年の隣の窓から一瞬見えた。もうすぐ到着らしい。
電車の音のリズムが徐々にゆっくりになっていく。そして遂に止まると、甲高い不快な音がとても長く響いた。扉が開いた。
駅長に切符を渡し、駅から出る。外はとても寒く、顔がじんじんと痛い。
掌を暖めるためにため息を吐いた。とても白くて、掌が一瞬見えなくなった。
駅の目の前にある、タバコ店の隣にある駐車場にゆっくりと歩き出す。
駐車場の管理人さんにいつも通りの挨拶と、駐車代を渡して愛車に向かった。
夜の中では磨き上げた自慢の車体の色が分からないのが残念だった。
車の中は当たり前で寒くて手が悴む。その手でエンジンを掛けた。
自動的にエアコンが動き出して、寒い車内を暖める。救われた気がした。
いつも通り帰り道を走らせる。いつもの山道に来た。
タバコも切れてきたことだから山道の脇にある自販機で買おうと、鞄から財布を取り出した。
自販機が近付いてきた。人影が見える。制服を着ている。あの少年だった。
買うのはやめておこう。
財布を横の席に投げて何も見なかったように走らせた。
自分の部屋に帰ると万年床に倒れた。埃臭い。
仰向けの状態でため息を吐いて、ゆっくりと起きて蛍光灯をつけて、テレビをつけて、そのリモコンで灰皿をこちらに近づけて、数本しかないタバコを口に咥えると、ふとあの少年のことを思い出した。
あんなところにいたのだから、多分タバコに手を出したのだろう。
自分が始めてタバコに手を出したときを思い出した。
そのときの味はとても不味くて苦しかったが、それよりも何か悪さをしたときのような、あの背徳的な感情が胸を焼いた。
その感覚がとても快感で、誰よりも自分は悪くて、誰よりも強くなった気がした。
あの少年も同じ気持ちを持ったのだろうか。
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紫炎の狼煙
マインドクラッシュ
これほどつまらない制限改定は無いな(*´ω`*)
まあ、ダメージは警告くらいだし、いいかな